「もー、最悪!」
 ウィンリィは髪をとかしながらトーストの端をくわえる。
「それはこっちの台詞だよ!」
 トーストにバターを塗ってフレッチャーに手渡すと、ラッセルはウィンリィに言った。
「それにしてもこんな事があるんだね」
 コーヒーで口の中のトーストを飲み込みながら、アルフォンスが口早に言う。
「全員の目覚ましが止まるなんて」
 フレッチャーがラッセルから渡されたトーストをもごもごと食べながら、ぼんやりそう零した。
「今はいろいろ言ってる場合じゃないだろ!」
 トーストを二口で食べ終えたエドワードが慌てて三つ編みを編んでいる。
 それは不幸としか言い様がない。
 全員の目覚しと携帯のアラームが見事に止まっていたのだ。
 学校に通うものとして、遅刻だけは避けたい。
 出来ることなら、あまり目立たず穏便に物事を進めたいと思っているのに。
 一家揃って遅刻など、もってのほかだ。

H20年 1月発行「マスタング一家物語」より一部抜粋。




戻る