「今思ったんですけど」
 珈琲を飲みながら、ラッセルはハボックを見る。
「何だ?」
「ここにいる人たちって、アルが鎧そのものだっていつ知ったんですか?」
 アルフォンス。
 鋼の錬金術師、エドワード・エルリックの弟。
 人体錬成の末に体を失い、エドワードによってその魂を鎧に定着させた異端の者。
「あー、それは、な」
 ふっと煙を吐き出して、ハボックは笑う。
「まぁ、何ていうか事故だ事故」
「……」
 ハボックの笑い方がいつもと違った。
 いつもどこか飄々としているハボックだが、何か含んだような笑い方にラッセルはすっと目を細める。
 そうすると、ハボックは溜息を一つ。
「……お前といいエドワードといい、やなガキだなお前等」
「え?」
「同じ目をしやがる。そんな目をすんのは大人になってからで十分だ」
 がしがしとラッセルの頭を撫でて、ハボックは口の端を上げた。
「聞きたいか?」
「興味が無いといえば嘘になると、思います」
 ラッセルの言葉遣いは、出会った頃のエドワードに似ている。どこか他人行儀な自分を弟を守ろうと一線を引いていたあの頃に。
「まぁ、同じ轍を踏まない為にも…ってお前等はもう知ってるんだったな」




H22年1月10日発行「Worter」より一部抜粋



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