壊れる音。
 壊れる音。
 聞こえてきたのは全てが壊れた音。
 知らなかった。
 知らなかった。
 一人だけ、知らなかった。




 重なっていた記憶は、二つの記憶。





 【市場に行こう 4 曝け出された過去】





 真っ直ぐな、目だった。
 本気の、目。
「何を……」
 言っている。
 そうロイが言うより早く、エドはカールに近付いてその顔を見上げると。
「あんた、強姦しただろ?」
 再び、強くそう言い放った。
「エドワード!」
 その言葉を戒めようと、ハボックが叫ぶ。
 しかし。
「少尉、ちょっと黙っててよ。オレ、この人に聞きたいだけだから」
 強い眼光をハボックに向けて、その先の言葉を遮った。
「…君、何を言ってるの?」
「だから、あんた、強姦しただろ?」
 カールは眼鏡の奥の目をゆっくりと開いてエドを見る。
 その目は。
 ……笑って、いた。
「可笑しな事言うね。僕が強姦?誰を?」
 ころころと笑い声を立てながら、ひどくおかしそうにカールは笑う。
「女。男強姦したってしょうがないだろ」
「……鋼の」
 ロイがゆっくりとエドの背中に回り、その肩を叩く。
「何を言いたいのか、さっぱりわからないが?」
「大佐にはわからなくていいよ。オレ、この人と話してるだけだから」
「そうはいかないだろう?下手をすれば、君を侮辱罪で捕らえなければならない」
「侮辱?事実を述べてるだけだぜ?」
 不遜な態度。
 それは、傍から見ればそう見えるだけであって、本当は。
「兄さん…」
 アルがそっとエドの名を呼ぶ。
「…熱があるから、帰ろう?」
「…お前だけ帰ってろ」
「そんな事言わないでよ……」
「お前は聴かなくて良い話だ、アル。だから……」
「…お姉ちゃんの話?」
 ゆっくりと搾り出すように、アルは声を出して。
「お姉ちゃんの、犯人……この人なの?」
 がちゃん。
 金属が擦れ合う音がして、アルの視線はカールを捉える。
「まさか!僕が5年前の犯人?そんな訳ないじゃないか!あの事件は赴任した初日に起こってたんだ。僕があの事件の犯人である筈が無い」
 アルの言葉に驚いたのか、カールは大げさな手振りでその言葉を否定した。
「調べてもらえば解るよ。ね、ジャン……」
「そうだな。確か資料室にあると思う」
 普段は見せない、少しイラついたようなハボックの顔。
 飄々としてとらえどころが無いのは、ロイだけではない。
 ハボック少尉もまた、とらえどころの無い男だった。
 その男が、あからさまな嫌悪を顔に浮かべている。
「なあ、エドワード……言っておく。こいつは、ま、少し変わり者だがそんな事をするヤツじゃない。それは俺が保証する。女だって、別に困っちゃいない。強姦なんて馬鹿なことするヤツじゃないんだ」
「それに関しては、私も保証しよう。彼は名家の生まれでね…家名を汚すような真似だけは絶対にしない。それだけは断言できる」
 ハボックとカールの付き合いは決して短いものではない。
 同じ時期に軍属となり、階級に差はあったものの妙に馬が合い親しくなった。
 それ以来、仲の良い友人として付き合っている。
 ロイもまた、士官学校時代からの知り合いであり、親しい後輩の一人だった。
 おそらくこの場所にヒューズがいれば、笑いながら言ったであろう。
 こいつは、そんな大それた事が出来るほど大物じゃない、と。
「………その、事件じゃねぇ」
「え?」
 エドは、呼吸が少しずつ出来なくなっている自分に気付く。
 しかし、ここで逃げるわけには行かない。
 ここで、立ち止まるわけには行かない。
 ゆっくりと数を数えて、前を向く。
「あの人の事件じゃない、そうだよな?シェスター少佐」
「……君は、何を言ってるんだい?」
 過去に起きた婦女暴行事件。
 それは、アルの話によれば近所の親しい女性が自殺したことで幕を閉じた事件。
 それではない、とエドは言い切った。
「おい、エドワード」
 エドとカールを遮るように、ハボックが身を乗り出す。
「お前が、不安神経症なのは解る。それが5年前の事件が原因だってことも。犯人が捕まえられなくて軍部の人間を憎むのも解るさ。でもな、こいつは違う。そんなことするヤツじゃない」
 わかってくれ。
 ハボックは、真っ直ぐにエドの目を見るとそう言った。
「…人一倍お人好で、でも芯が強くて。自分の家の事なんて鼻にかけないし、それに悪ふざけだってする。女に対しては奥手で、しかも赤面症と来てる。……そんなヤツが、女を強姦したってのか!?」
 ぐい。
 軍人にはあるまじき行為、かもしれない。
 ハボックはエドの胸倉を掴むと、額をくっつけそう怒鳴った。
 夜間とは言え、軍施設の廊下に人が来ない訳ではない。
「大佐……」 
 遠めにその集団を見ていたホークアイがロイに近付き、そっと耳打ちする。
「ここは人目につきます。そこの会議室に入られた方が……」
「そうだな…」
 ホークアイの言葉にロイは頷いて。
「四人とも、こちらに来なさい。そこは目立ちすぎる」
 傍にあった会議室のドアを開き、神妙な顔でロイは四人に会議室に入るように促した。





 泣いていたのは、ウィンリィ。
 黙っていたのは、兄さん。
 それは、お姉ちゃんの家。
 ううん、違う。
 あれ、は。





 一向に事態は前に進もうとしなかった。
 カールを婦女暴行犯だと決め付けるエド。
 否定するカール。
 説明するハボック。
 心配そうにエドの傍にいるアル。
 ロイとホークアイは4人の会話を聞きながら、頭を抱えた。
「…この際、真実をはっきりさせよう」
 4人の間に割って入ったロイが、そう言い放つ。
「鋼の、シェスター少佐が婦女暴行犯だと決定付ける理由は?」
「被害者がいる。それだけだ」
「シェスター少佐、覚えがあるのか?」
「無いに決まってます!どうして僕が…」
「していない、という証拠は?」
「それはあんたも知ってるでしょう、大佐。こいつの人柄を」
 話は平行線。
 ロイは一息ついて。
「鋼の。被害者がいる、と言っていたね?その女性の名前は?」
「……言いたくない」
「それは、ここにアルフォンス君がいるからかね?」
「…それもあるけど…あんた達が言ったんだろう。こういう事は表沙汰にするもんじゃないって」
 エドは鋭い眼光をロイに向け、じっと睨みつける。
「だから、言いたくない」
「おい、ちょっと待て、エドワード。その女の名前がわからなきゃ、それを確認しようも無いだろうが。その女が嘘をついてないとは限らないだろう?」
 名前を明かそうとしないエドに、ハボックは頭を掻きながら苛立つ様に言い放った。
「嘘はついてねぇ。それは、断言できる」
「兄さん……」
 頑なな、兄。
 アルは、こんな場面を知っている気がした。
 何を聞いても、「お前は知らなくていい」それしか言わなくて。
 それは、どこで?
 あの人の、家?
 アルの中で、記憶が混乱する。
「もしかして……」
 カールが思いついたように、そして、ひどく済まなさそうに口を開いた。
「カール?」
「間違ってたら、ごめんね。もしかして、君が言ってるのは、金髪の女の子?」
 エドに視線を合わせるように、カールは少しかがんで。
「そうだったら、僕は君に謝らなくちゃいけない」
「!」
「シェスター少佐?」
 カールの言葉に誰もが、驚く。
「お前、何、やったんだ……?」
 まさか…。
 強姦。
 そう言いかけたハボックの言葉より先に、カールは首を横に振って。
「違うよ、ジャン。これだけは信じて欲しい。僕は強姦なんかしていない。ただ、……少女とね、関係を持ったことがある」
「!」
 それは、意表をついた告白だった。
「金髪の女の子だった。名前は知らない。彼女はきっと大人の世界に興味があったんだろうね。僕に、関係を求めてきたんだ。大人にして欲しいって……僕は、何度も断ったよ。でもね……納得してくれなくて、泣き落とされたって言うのかな。それで、1度だけ」
 目を伏せて、カールは過去の罪を話す。
「相手が子供だって解ってた。でも、その子はそうしないと納得してくれなかった。……抱いてくれなきゃ死んでやるって言われたよ……。僕、かなりのお人好に見えたんだろうね」
 苦笑、と言うのが正しいのだろうか。
 今にも泣きそうな顔をしてカールは笑った。
「その事に関してだったら、僕は君に謝らなきゃならない。……きっと、償っても償いきれない罪だから」
 カールの言葉にエドは無言になる。
 言葉が、返せなかった。
 まさか、こんな形で帰ってくるなんて。
 予想もつかない事態だった。
「お前……」
 呆れた様なハボックの声。
「どこまでお人よしなんだ!それが犯罪だって解ってて!」
「……でも、そうしなければ、彼女は納得してくれなかった。死んでたかもしれないんだよ、ジャン!」
 カールの声が震えている。
「僕が一人悪人になる事で、彼女を救えるんだったら……」
「馬鹿か、お前は!」
 ごん。
 ハボックの拳が、カールの頭を直撃した。
「った……」
「おい、エドワード。これが真実だ。お前の言いたいことはそれで外れてないんだろう?こいつがやらかしたって言う婦女暴行罪の真実だよ!」
 ハボックの怒りの方向はわからない。
 カールを誘った少女へか。
 少女を抱いたカールへか。 
 カールを婦女暴行犯と思い込んだエドへか。
「全く……そう言うところは変わっていないな…カール」
「ロイ、先輩……」
「人に頼まれると嫌とは言えない。軍属である限り、その優しさは足元を掬うぞ」
「すいません…」
 目の前で繰り広げられる茶番劇。
 エドは、そう思った。
 これを茶番劇と言わずして、何と言う?
 背筋を冷たいものが滑り落ちた。
 これが真実なら。
 これが真実なら。
 ……あの日の記憶は何だろう?
「鋼の……すまない。これはこちらの落ち度だ。大人としてしてはならない事をシェスター少佐はしてしまった。もしその少女がまだ傷を抱えているのなら…謝罪に行こう」
 エドの方を向き、真っ直ぐな視線でロイは言う。
「謝罪……?」
 声が震えた。
「兄さん…?」
 エドの異変にいち早く気付いたのは、アルだった。
「エドワード。その子、お前の事、好きだったじゃないか?」
「え?」
 ハボックの言葉に、思わずアルが反応する。
「お前の気を引きたくて、そんな話をしたんじゃないか?」
 強姦された、など。
 軍の人間に強姦された、などと。
「ハボック少尉、それはないです」
「アルフォンス?」
「もし、その女の子が兄さんに話したとしたら……多分、それは本当だったと思います」
 泣いていたのは、ウィンリィ。
 黙っていたのは、兄さん。
 あれは、どこだった?
 そう、あれは。
 今は無い、ボクらの家。
「兄さん、まさか…ウィンリィ?」
 その言葉に反応したのは、ホークアイ。
「ウィンリィちゃん、なの?……あの子だとしたら……」
 あり得ない。
 カールの言っていたことは、根底から覆される。
「……安心しろ、アル。ウィンリィじゃねぇ……」
「でも、だったら……誰なのさ!」
 ガシャン。
 アルはエドの方を向き、声を荒げた。
「……この人が、あれは強姦じゃないって言うんなら強姦じゃなかったんだろ」
「兄、さん?」
 俯いたまま、エドは言葉を紡ぐ。
「女のほうから誘った。そう、あんたは被害者なんだろ、シェスター少佐」
 エドがゆっくりと顔を上げて、カールを見た。
「……そんな事言ったら、彼女に悪い。彼女が被害者、だ」
「いや、被害者はあんただ。そう信じたい人がここにはいる。そうだろう、少尉、大佐」
 帰ってきたのは無言。
 見も知らぬ少女が悪いのだと、思いたい。
 親しい人間より、そちらを疑いたいと思うのは人の常だろう。
「……それでいいよ、もう」
 それだけ告げると、エドはくるりと背中を向け扉の方に歩き出す。
「だったら、言うべき事があるだろ、エドワード」
「あ?」
「カールに。人として当たり前の言葉だ。自分が悪いと思うなら、な」
 ハボックの言葉。
 それは。
「………ごめんなさい」
 掠れた声で、エドは確かにそう言った。
 後ろを向いていた為、表情は読み取れなかったが。
「…僕の方こそ、すまない。君達に辛い思いをさせてしまったから…」
 項垂れた様子のカール。
 ロイは、そのカールの肩を叩いて。
「痛み分け、と言ったところだな」 
 そう、断言した。
「鋼の」
「何だよ?」
「差支えがなければ、その少女がどうなったか教えてもらえるか?」
「え?…」
「このままでは、シェスター少佐も君もすっきりしないだろう。せめて、幸せになったかどうかだけでも」
「それは、命令?」
「そう取ってくれたほうがいい」
 隠しておきたかったのに。
 言いたくなかったのに。
 決して。
 どうなったか、なんて。
 もう、どうでもよかった。
 一刻も早く、忘れたかった。
 思い出したくなかった。
「……」
 息が出来なくなる。
 それでも、答えなければならない。
 命令、ならば。
 ちらり、とエドはアルを見る。 
 出来れば、この場所にいて欲しくは無い。
 どうにかして、外に出せないか。
 エドがそんな事を考えているとは知らないで。
「……………」
 アルは無言でいる。
 記憶がおかしい。
 泣いていたのは、ウィンリィ。
 黙っていたのは、エド。
 それは、被害にあった女性の家ではなくて、自分の家。
 おかしい。
 おかしい。
 思い出せ。
 何を言った。
 ウィンリィは。
 エドは。
 


 『ごめんね、ごめんね……っ』
 『お前らのせいじゃねぇ…』
 『だって、だって……っ』
 『だから、お前らの所為じゃない。オレの運が悪かったんだ』
 『だって、エド…』
 『アル』
 『忘れろ』
 『お前は知らなくていい』
 『だから、忘れろ』
 『いいな、絶対忘れるんだぞ?』


「………っ!」
 声が出ない。
 記憶は二つ重なっていた。
 確かに泣いている女性を発見した時、ウィンリィは泣いていた。
 エドは、直ぐに。
 女性の体を包むものを探して、その体にかけて。
 ……やっぱり、泣いていた。
 黙ってたんじゃない。 
 黙ってたのは。
 ウィンリィが泣いていた。
 今は無い、あの家で。
 その時、エドは。
 黙っていた。
 乱れた衣服で。
 晒した白い素足に伝っていたのは。
 赤い。
 赤い。
 …………血。
「兄さん!」
 アルの声が思わず、上擦った。
「兄さん、ねえ、兄さん!嘘でしょ?兄さん!」
「アルフォンス君…?」
 突然声を荒げたアルに、そこにいた大人達は目を丸くする。
「嘘だって言ってよ!」
「……思い、だしたのか?」 
「嘘だって言ってよ、ねぇ!」
 縋り付くように、アルがエドの右腕を掴んだ。
 目に見て取れる、アルの混乱。
「……だから、お前には聞かせたくなかったんだ……」
 微笑。
 そう言うのが多分正しいのだろう。
 薄く笑ったエドは、アルの面に手を伸ばしてぽつりと。
「あれは、違うから。お前は忘れてろ……」
「でも!」
「行こう、アル。もう、いいから」
「兄さん!」
「……大佐、その子な」
 もう、隠しておく必要なんて無かった。
 隠しておけなかった。
 思い出してしまったから。
 一番知られたくない人間が。
 思い出してしまったから。
 だから、もう。
 ゆっくりと、蘇る光景。
 怒り。
 憎しみ。
 痛み。
 悲しみ。
「10歳で少佐に抱かれて、その後事故にあってさ……」
 少しの沈黙。
 それが意味するものは。
「死んだ、の?」
 カールが震えた声で聞き返す。
 その言葉に、エドは。
「事故を、起こして………左足と右腕失ってさ。12歳で国家錬金術師になったよ」
「……は?」
 エドの言葉に、間抜けな言葉を返したのは、ハボックだった。
「おい、待てよ……それじゃ、その子はお前って事になるだろうが」
「そうだよ、オレ」
 ハボックの言葉に、エドは淡々と返事を返す。
「……鋼の」
 深く沈んだ、ロイの声。
「何だよ?」
「私は、冗談を言え、と言った覚えは無いが?」
 怒っているのか、ロイの視線は鋭い。
「大佐!兄さんは!」
「そっか……わかんねぇわな、これじゃ」
 無表情。
 その状態に近いエドは、くるり、とロイ達の方向に向き直って。
 赤いコートを脱ぎ、黒のジャケットを脱ぎ、そして最後の一枚、黒のノースリーブを脱ぐと。
「まだ、わかんないなら、下も脱ぐけど?」
 右肩に食い込む機械鎧。
 それとは対照的な、肌の色。
 男にしては、華奢としか言いようの無い肩幅。
 そして、成長過程の為、成人ほどはないが膨らみを帯びた、胸。
「……これが、その少女の末路。これで、満足か?あんたらは」
「鋼…」
 ロイが名を言うより早く。
 ばさり。
 エドの肩に青い軍服の上着がかけられる。
「ホークアイ中尉……?」
「もう、何も言わなくていいから……エドワード君…」
「でも、命令でしょ?」
「いいから!もうそれ以上、言わなくていいから!」
 ホークアイはぎゅっと、エドの体を抱きしめて。
「ごめんなさい……」
 そう、一言呟いた。
 その瞬間。
「………っ」
 起こった、発作。
 エドは胸を押さえて、蹲る。
「エドワード君!」
「兄さん!」
「………っ……っ」
 すがるように伸ばされた手。
 がしゃん。
 しゃがみこんでその手を握ると、アルフォンスは。
「ホークアイ中尉…兄さんを、この部屋から連れ出してください……」
「え?」
「ここにいたら、兄さん…余計にひどくなるから…」
 一度エドの手をぎゅっと握り締めてから話すと、アルフォンスは立ち上がりロイ達を見る。
「…兄さん、不安神経症なんかじゃないんです」
 声が、震えた。
「女性じゃないと、多分、駄目だから……」
「それって…」
 荒い息を繰り返すエドを抱きしめて、ホークアイはアルを仰ぐ。
 その視線に返すように。
「兄さん、極度の男性恐怖症なんです……それど、同じくらい軍服恐怖症で……」
 ぐ、とアルは拳を作って。
 がらんどうな、けれど強い意志を点した瞳でロイ達を見据えると。
「……姉さんを、よろしくお願いします」
 そう、背後のホークアイに告げた。





 アル。
 お前には言えない。
 言えば、お前は泣くから。
 だから、ごめん。
 強姦された、なんていえない。
 お前すら、怖かったなんて。
 言えない。
 怖かった。
 怖かった。
 怖かった。
 自分の足を伝う血が怖かった。
 ごめん。
 アル、ごめん。
 ごめん。
 ごめん。
 ごめん。






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